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Melemedy

ただいまロングバケーションちゅう

『From the Sea』を終えて

 

おばんです。

おひさしぶりです。

フェスティバルトーキョー『From the Sea』無事に終了致しました。

本当にお越しくださったお客様と、献身的に支えてくれたスタッフさんのお陰でございます。本当にありがとうございました。

 

今日の記事は長くなると思いますので、お時間のあるときに読んでいただけたらなぁと思っている次第でする。

 

 

今回の公演は、お客様と役者が一対一のツアー形式で、会場となった立会川周辺を歩くというもの。

去年急な坂スタジオで行われた『つれなくも秋の風』から引き続きソ・ヒョンソクさんの演出の作品で、私は二度目まして。

作品の準備は8月から始まり、今回のテーマである『喪失感』をいかにお客様から聞き出していけるかというトークを毎日延々と繰り返し、その後ディスカッションの日々。

去年の作品は『結婚』という大きな、しかも万国共通であるパッケージがあったのだけれど、今回の作品は喪失感という目的地がなんとも漠然とざっくりと、ふんわりしたものだったので、本当に苦労した。私は。

何より、クリエーション中、毎日『亡くなった方』の話を聞くことが本当にしんどかった。つらかった。設定も決まっておらず何者でもない私。セラピストになってはいけないし、霊媒師でももちろんない。その記憶を浄化することも出来ない。思い出してもらうだけ。それをただ聞く。それがとてもとてもしんどかった。

 

 

立会川というところには江戸時代から明治時代前半まで使用されていたという鈴ヶ森処刑場があり、罪人をこっそり家族が見送ったといわれる『涙橋』という橋があり、そこがとても大きなキーポイントの場所になった。

演出のソさんは『感情を大きく表す“涙”という単語が橋の名前になっているという所が魅力的だった』と仰っていた。韓国ではそういう名前の付け方はしないらしい。へぇ。

そしてその後大井競馬場に向かい、最終地点は勝島橋になっている。

大井競馬場は埋め立てられて出来た土地。海だったことを喪失した場所。

 

私達役者の役割は、お客様と土地の喪失感を繋ぐというものだった。

 

観客の方に媚びる訳ではないが、本当にお客様の理解力の高さで成り立った作品だと思う。私の理解力だったらこの作品を到底楽しめなかったし、何よりゴーグルが痛い(笑)

視覚と聴覚を支配され、70分も拘束されるというかなり厳しい条件の中、楽しんでいただけた方が沢山いらっしゃるという事実にただただ感謝なのです。

 

 

正直私は本番が始まってからの方が、どんどん作品への理解が深まっていった。

私は役者であり、本番中は演出家としても動く。暗転も音響出しも全て私の采配次第。内容はお客様毎に勿論変わっていき、結末は選べない。

どのタイミングでゴーグルを閉じたら気持ちが良いんだろう。とか、あぁ車が来ちゃったからこの後台詞言おうとか(笑)

自分自身をディレクションしながら進む作品と言うのはそうそうあるものではなくて。

そしてお客様の返答次第で物語が変わっていく。レギュラーがない。イレギュラーしかない。だからどんどん作品が広がっていく。

 

そうそう。一番初めのシーンで川が下に流れているイメージで言ってくれと演出に言われた台詞があったのだけど、最後の方は、なんて言うんだろう、幽体離脱?の様な感じで、自分は橋桁に座っているのに体の実体はなく、浮遊している様な感覚に襲われて、「あぁ私は死んでいるんだなぁ」なんて思ったりした。

 

 

去年も思ったけれど、ソさんの懐の深さをとても感じたし、一から作品を作ることに関われるというのは中々無い事だなと思って、そういう意味でもとても幸せな時間だった。死ぬほど大変だったけど、今まで関わった作品の中では最も幸せな経験だったと思う。

ただ、昨日演出家のトークショーに行く前にマッサージをしてもらったら、施術後に『足裏の頭の部分が異常なコリでしたよ?』と心配された。

だって物凄い頭使ったもの。

今年一年分の思考を使った作品(笑)

 

個人的な話だけど、いや、ここは個人的な事を言う空間だけど。私は役者で在ることをずっと誇れなくて、ヤクザな仕事だと思っていたし、ずっと自信がなかった。

今も決して自信満々ではないけど、少なくとも役者という仕事の面白さを知ることが出来た。それは私にとってはとても大きな収穫で、本当に今回携わらせてもらえて良かった。去年以上にそれを感じることが出来たのは、作品の困難さとか、頭を悩ませてみんなで作品を作ることが出来たこととか、本番での作品の広がりとか、いろんなものの総合だと思う。

 

刺激的で、でも温かくて、いい現場だった。幸せだった。

 

ソさんの意図とは変わってしまうかもしれないけれど、お客様が話してくれた全ての喪失感のエピソードが、天に召されて昇って、浄化されたらいいと本当に思う。願う。

そして祈る。

でも私も稽古中そういう話を何度もしていたら、後悔とか悲しみとかが消えていったから、強ち無い話ではないと思うんだけどなぁ。話すことで浄化されていったんだと思う。だからお客様の話も今すぐは無理でも、来月、来年くらいには泡のように消えていったらいいなぁと思う。

 

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スタッフさんが送ってくれた最終地点の風景。全てが、風に、水に流れる場所。

土地の持っている悲しみが、苦しみが、どうかどうか流れていきますように。

 

私がこの作品で一番好きだった台詞。

 

 

涙という単語一つがどうして空っぽの魂を丸ごと入れておくことができるでしょうか?

 

 

 

格好良く終わろうと思ったけど、前回の話が気になっている人のために。

共演者には無事占って頂き、『婚期はあるが、何かが一つ引っかかってすんなりとは進めない。しかもその引っかかりは丁寧に取り除かないと駄目。』と言われた。

えー。めんどっ。

 

お越し頂いた全てのお客様、今作に関わっていただいた全てのスタッフ様、共演者の皆様に心から感謝致します。これでなんとか丸め込んで終わろうと思います。

長々お読み頂きありがとうございました。